Una regola

 バーナビーは身体を起こすと、力の入らない虎徹の身体を抱き寄せて向かい合わせにする。
 はふはふと空気を求めるように呼吸を繰り返している虎徹は、バーナビーに身体を起こされるとそのままぐったりと、見た目以上に逞しいバーナビーの胸元に倒れこむ。
 着瘦せするバーナビーの身体は、やはり鍛えられているだけあってしなやかな筋肉がしっかりと付いていて頼もしい。腕から胸元にかけても、しっかりと発達していて、その弾力が虎徹には心地よかった。
 虎徹も身体を鍛えているから、筋肉がないわけではないが、人種の差だろうか。バーナビーほどしっかりついているわけではない。
 虎徹はぼんやりとしながら、向かい合っている羨ましいほどの身体付きをしたバーナビーの首にゆるゆると手を回して抱きつく。
 バーナビーはそれを口角を持ち上げて笑いながら、虎徹の下半身にするりと手を伸ばす。
「んぅ…っ…」
 倦怠感の渦巻く腰を跳ねさせ、虎徹は鼻から抜けるような吐息を零す。
 まだ勢いを保ったままの虎徹の欲に指をからませて、バーナビーはぐっとそれをバーナビー自身のほうへと引き寄せて、大きなその手で握る。
 情事が始まってまだ一度も達していないバーナビー自身は、しっかりと勃ち上がり、反り返って脈打っていた。
「熱い…」
 思わず虎徹は零して身をよじる。
 お互いのペニスを一纏めにされると、その大きさの違いが分かって、男として何とはなしに虎徹はみじめな気持になる。
 バーナビーの雄はその顔に似合わず、大きすぎるほどに大きい。
 虎徹も決して小さいほうではないが、それでも比べると貧相に見える。
 悔しくて唇をかみしめる虎徹を見下ろし、それに反比例してバーナビーの笑みはどんどん深くなる。
「虎徹さん、一緒に扱いてください」
 甘い甘い砂糖菓子のような声音で耳元でささやかれ、虎徹はどろりと腰から下が崩れ落ちそうになる。
 ぞくぞくと背筋を震わせながら、虎徹は折角バーナビーの首に回した手をほどいて、言われるがままにそっと両手で握りしめる。
 虎徹の精液にまみれたペニスがバーナビーのモノに触れてぐちゅ、と濡れた音を響かせる。
 卑猥な音に耳まで犯されているような気分になり、虎徹の体温がまた上昇する。羞恥と快感とで赤く染まっていた身体が、さらに赤味を増していく。
 とろりとした視線を向け、虎徹は自身を縛られているにもかかわらず、ただ無心にバーナビーの自身と擦り合わせる行為を続ける。
 快感のせいで思考がまとまらない虎徹は、ただただ自分自身の手で自分を追い詰めながら、イけない苦しさに眉根を寄せて吐息を零す。
 電気のように身体を苛む快楽に力が抜けて頭を支え切れなくなり、こてん、とバーナビーの肩口に虎徹は頭を預ける。
 飲み込みきれない涎を零しながら、バーナビーの肩を濡らす。
「あ、あぁッ…んー…っ…バニー…イかせて…イきたい…」
 自分でネクタイを解こうとしないのは身体を重ね合わせてきた結果の産物。こういう時に自分でしようとすると、バーナビーはさらに虎徹を責め立ててくるのを、虎徹は身にしみて理解している。
 この間も許可なくほどいて、その後三時間ほど乳首だけを責められて気を失った。その前も勝手にしようとして、尻を叩かれ続けて泣きながら許してくれと懇願させられた。
 もうそんなことは繰り返したくない。
 虎徹はねだるように痺れたままで感覚の鈍い腰をバーナビーのほうへと必死で擦りつける。
 目じりに涙をためて、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を響かせながら、虎徹は掠れた声であえぐ。
 それでもバーナビーは余裕の笑みで、虎徹を見下ろすだけで自分からは特に何もしようとはしない。
 虎徹は何も言わない、何もしないバーナビーにどうすることもできない。止めろとも言われていない以上、こうして手淫をし続けるしかない。
 まるでバーナビーのペニスを使ってマスターベーションをしているようで、酷く恥ずかしい。
 ぶつけるように擦り合わせていると、ようやくバーナビーの欲もしっとりと濡れ出してくる。
「あぅ…っん……あ、ああっ…あ…も…ぅ…」
 ひくひくと身体全体が震えだす。陸に揚げられた魚のように痙攣させ、びたっとバーナビの胸元に身体を預ける。
「ひぃ……っん…!!」
 上半身が崩れてバーナビーの胸元に倒れこむと、虎徹の立ち上がった乳首がバーナビーの胸板にくにゅ、と押しつぶされる。
 想像していなかった刺激に悲鳴が上がり、そしてまた吐き出せないままに気をやってしまう。
 一度ドライオーガズムを覚えた身体はあっけないほど簡単に上りつめる。
 ずるりとそのままベッドに倒れこみそうになる虎徹を、バーナビーは虎徹の背中と腰に手をまわして支える。
 バーナビーの逞しい腕に支えられながら、背筋をのけぞらせて虎徹は極めた後の余韻に浸る。重苦しいマグマを股間にたぎらせたまま、虎徹はぶるぶると震えている。
「虎徹さん…まだ僕はイってないですよ?」
 バーナビーが声をかけるが、虎徹は反応を返しては来ない。ただぐったりとしながら、何もない虚空を見つめてバーナビーほどには厚くない胸板を上下させている。